『ファット・ア・マーノ』という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
イタリア語でハンドメイド(手仕事)を意味していて、これまでイタリアのファクトリーを訪れる度に聞いてきた言葉の一つです。
ピッティ・イマジネ・ウォモ(世界最大級のメンズファッション展示会)やミラノコレクションなど最先端のファッションが集まる国イタリア。その華やかな世界を影で支えているのが熟練の職人達です。イタリアは元々ヨーロッパのメゾンや大手アパレルの生産地として栄えた背景があり、糸、生地、付属、縫製…など様々なファッションに携わる仕事があり、その道のプロと言われる熟練の職人を育んできた土壌があります。
そんな熟練の職人達を束ねるファクトリーのオーナーは皆バイタリティに溢れ個性的な人物が多いです。テレビや映画で見るようないかにもイタリア人?(笑)というような陽気で気さくな人物もいれば、寡黙で実直な人物もいて様々ですが、彼らに共通することが一つあります。それは、職人を本当の家族のように大事にすることと、モノ作りに対するプライドを非常に強くもっていることです。
商談時に商品の説明を受けていると、
『ファット・ア・マーノ!』(ハンドメイドだ!)
と皆必ず言い、そしてニヤリと笑うのです。ハンドメイドの醸し出す柔らかい雰囲気とその技術に愛情を注いでいるのが、こちら側にもひしひしと伝わってくるのです。
コストや手間も当然通常のものよりかかってきますし、技術習得も大きな問題です。簡単な流れ作業で作られる服は、特別な技術を必要としないので誰が縫ってもさほど大きな違いが生まれません。しかし、ハンドメイドを駆使した服は相応の技術と経験のある職人でないと作ることができないのです。
そして、そういった職人の手によって作られた服は、なんとも言えない独特の雰囲気をもった服に仕上がります。少し大袈裟かもしれませんが巷にありふれた服と違いオーラを纏っているようにも感じられるのです。それは、技術や薀蓄といったことも勿論ですが、服が出来上がるまでに係わった全ての人達の情熱や想いがそう感じさせるのだと思います。
RING JACKETでは、『注文服のような既製服を作ろう』という目標のもとに60年以上にわたって試行錯誤してきました。イギリス、アメリカ、イタリア…世界中の服を研究しました。
そこで辿りついたのが前述のイタリアのハンドメイドのモノ作り。余分な副資材をなるべく使わずに生地一枚で仕立てたような服、生地の特性を最大限活かした服作り。
そのモノ作りを究めるために、パターン(型紙)を何度も修正し、芯地、縫い糸、釦などの副資材も既製品で納得のいくものがないときは一から特別に作りました。また、ときには海外まで赴いて手に入れることもありました。
そして、試行錯誤しながらハンドメイドのモノ作りとこれまで日本でやってきたモノ作りとを融合させていきました。
こうした試行錯誤、積み重ねた技術の研鑽、服の細部まで込められた情熱によってRING JACKETは、次第に独自のスタイルを築いていくことになります。ジワジワと広がってきた評価は国内だけにとどまらず韓国、香港、シンガポール…などアジアの富裕層と服好きの人達に受け入れられ、現在はNEW YORKをはじめ北米マーケットでも着実にファンを増やしつつあります。
しかし、まだまだモノ作りの改良の余地はあります。おそらく「完成」することはないでしょう。なぜなら、より高みを渇望する者だけが本当に素晴らしい服を作ることが出来ると信じているからです。
先日、イタリアでRING JACKETの服を見せ
『ファット・ア・マーノ!』(ハンドメイド)というと
職人のオジサンが、
しばらく服をジ~~っと見た後、黙って2~3回うなずき、、、
『ベ~~~ッラ!!!』(美しいっ!)
と言ってニヤリと笑いました。
////////////////////////////////////////////////////
平日は商品紹介を沢山しているので、簡単なコラムを日曜日に不定期で投稿していきたいと思います。
海外出張裏話、商品開発秘話、それに携わる人達、ときには薀蓄…etc。普段触れることの少ない『服の向こう側』をお伝えできればと思います。
ご笑覧下さいませ。
RING JACKET creative div. manager 奥野剛史